How to Follow Bob Dylan
ボブ・ディランの追いかけ方

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ツアー・クルー


ボブ・ディランのツアーにサウンド・クルーとして同行している 西村 哲さんに 私西村位津子が電子メールでインタヴューを行いました。西村 哲さんのツアー・レポート連載もお楽しみください。

  • クルー・インタヴュー 1
  • クルー・インタヴュー 2
  • ツアー・レポート

  • クルー・インタビュー (2)

    最終更新日: 1999/5/15(日)





    どうやってEPCに入社したんですか? (質問者:たかゆき)

    1993年にデフ レパードが来日した際 エレクトロテック(私たちはETと略しています)の人と知り合うことが出来ました。日本の音響会社を退社後、1996年にロスアンジェルスを旅行をしていた際に再度彼らのショーを見に行く機会がありました。クルーに知り合いはおりましたので本番前にバックステージパスを入手し楽屋に行き、いろいろなクルーと自分の現状を話したところ皆に口をそろえてETへの入社を勧められたのです。さらにこの日の夜ETの社長とも話しが出来て「そういうことなら」ということで後日彼に履歴書を送り、面接をする機会を得ました。その後、以前に会ったETの人が社長に強く勧めてくれたこともあり今日に至っております。



    入社するには専門的な知識が必要なんですか? (質問者:たかゆき)

    はい。特に日本人である私がアメリカ合衆国で働く場合は知識だけでなく経験も重要になります。



    給料はどのくらいですか? (質問者:たかゆき)

    質素に生活し少しは貯金ができる程度です。外食はほとんど出来ませんししてもいません。額面だけを単純に比較すると日本のときの2/3に減りました。隔週金曜日が給料日です。慣れてくるとこのほうが私には生活がしやすいです。



    ボブと接する機会はありますか? (質問者:たかゆき)

    ほとんどありません。バックステージで擦れ違うことがあってもまず目を合わせてくれません。彼はいつもセキュリティーの人と歩きいつも下を向いています。この1年半ほど10回のツアーに参加し、会話らしい会話は2回だけです。それも「マネージャーはどこにいる?」「あそこです」、「そこの水を取って」「ハイ」それだけです。

    ツアー中にBOB DYLAN自身はサウンドチェックに顔を出すことはありません。サウンドチェックはいつもバンドだけです。彼は本番の前に彼専用のツアーバスで来てそのまま自分の楽屋へ。ごくたまにケイタリングに顔を出すだけでいつも楽屋にこもっています。そして本番が終わればまたバスに乗ってさようならです。ですからパジャマの色も朝御飯の内容も本人に直接聞くしか方法がありません。



    マイアミでのリハーサルとはボブとバンドのほか、ツアークルーも参加するんですか?

    いいえ、ちがいます。

      (行程表からの引用)
        Jan.20     Band crew travel to Miami FL
        Jan.21-25  Rehersal at Miami FL
        Jan.24     Production crew travel to Ft. Myers FL
    バンドクルーとはPAオペレーター、モニターオペレーター、照明オペレーター、各楽器のテクニシャン、プロダクションマネージャー、を指します。プロダクションが彼らに報酬を支払います。プロダクションクルーとはサウンドクルー、ライティングクルー、ケイタリングクルー、バスの運転手らを指します。報酬は彼らの雇用先ないし契約先の各会社が支払います。もちろん私はプロダクションクルーの中のサウンドクルーです。ご理解いただけますか。たとえば1997年の日本公演の際はバンドクルーだけが来日しているはずです。楽器以外の音響、照明機材はすべて日本の物を使用しましたから。



    リハーサルはツアー前の恒例なんでしょうか?

    はい。通常3日から5日ぐらいをリハーサルに当てています。これにはもちろんBOB本人も参加します。また通常こういったリハーサルはどこかのライブハウスを貸し切る事が多くリハーサルスタジオで行うこともあります。そこには機材はあるわけですから、残念ながら私の出番はありません。もっとも昨年の春一度だけモニター機材をリハーサルに提供したことがありその時は唯一私だけがプロダクションクルーとしてリハーサルに参加しました。また昨年のヨーロッパツアーの際もフェスティバルに参加した際は楽器とモニター機材はツアーで使用しているものを使用したため他のプロダクションクルーがオフの日でも私は働いておりました。私はバンドクルーに一番近いプロダクションクルーという言い方も出来ます。





    ディランのヴォーカルと楽器のバランス、特にディランのリード・ギターのヴォリュームはだれが決めているのですか? (質問者:後藤博和)

    ご質問が会場内で聞こえる「ヴォリュームについて」というふうに判断しお答えします。基本的な個々の音質、そして全体のバランスについてはボブ ディランのパーソナルマネージャーのジェフ クレイマーがPAのエンジニアであるパブロ(本名ポール ウィーラー)に細かい指示をし、後はパブロに任せています。パブロは昨年の秋からこのツアーに参加している人で初めの現場数本は本番中ずっとジェフがパブロの横についていましたが今ではもう完全に彼に任せているようです。ギターアンプそのものから出てくる音質、音量ということでしたらギターテクニシャンであるトミィー モロンジェーロが決めていると言えると思います。

    前のエンジニアはEdward Wynneといい通称はコーチでした。それこそ10年前後はボブのPAのサウンドを務めたはずです。それだけにツアーバスにあるソファにはコーチコーナーというのがありそこは彼の指定席でもありました。



    私はそういう面に疎いんですが、交代してから音は変わったと思いますか?

    はい。それこそがらりと変わりました。コーチよりよくはなりました。ただ、パブロの場合、ソロのときの音量の上げ方が極端に大きいこと、「おかず」として叩くドラムスのタムタムの音量が大きいこと、そして今一つベースの音が引っ込んでいるのが私には不満です。もっともパーソナルマネージャーであるジェフがこれでOKを出しているのでしょうからそれらは私の好みの問題かも知れません。このあたりがこの仕事で難しい面でもあります。



    ついでに初歩的な質問で恐縮ですが、サウンド・ボードにいる人たちがPAのエンジニアなんでしょうか?

    ボブディランのツアーの場合、一台のボブ用の音響卓、オープニングアクトの数分のそのほかの音響卓、そして共用する一台の照明卓が客席の真ん中にあります。音響卓は通常前側に、照明卓は30センチから60センチくらい高くなった後ろに位置しています。サウンドボードにへばりついている人がPAのエンジニアです。その後ろの方にいる人がPAテクニシャンと呼ばれる人でPAのスピーカーをどの位置に何段吊って均等な音圧で客席をカバーするかを決定したりPA卓回りのセッティングをしますしスピーカーのチューニングもします。このエリアにはマネージャーがいることもありますし、私も本番中に遊びに行きます。ゲストの人が来ることもあります。



    私はケニーG みたいな髪型の黒いジーパン姿の人にセットリストを分けてもらった覚えがあります。

    ひょっとするとこの人は照明のオペレーターであったKenny Mednickではないでしょうか。彼も実は今回から参加していません。彼は日本にはそれなりに造詣があったんですよ。私はときどき彼に短いセンテンスの日本語を教えていました。



    "Good evening ladies and gentlemen, would you please welcome Columbia recording artist...BOB DYLAN!" と開演時に言ってる人は誰ですか?

    プロダクションマネージャーのアラン サントスです。



    ボブが全てのコンサートを録音・撮影させているというのは本当ですか?

    PA卓で毎回録音はしていますが撮影は一切していません。



    やっぱりボブは録音してるんですね。どこかで誰かが膨大なテープを保管してるのかと思うとちょっとショックです。めまいがします。

    パーソナルマネージャーのジェフ クレイマーが管理しています。もっとも今回のツアーで彼が顔を見せたのは最初だけ。その後はPA卓周りの機材の中に保管されているのは知っています。



    判らないのは、なぜ録音しているのか、です。

    公演後にツアーバスの中で聞いているという話は聞いたことがあります。しかしでは何のため?と言われるとわかりません。お客さんの録音を許可することは無いでしょう。




    プロダクションツアーという言葉を説明してもらえますか。

    最後のアトランティックシティ公演、ラスベガスの2公演は別の言い方をすれば営業の日でした。ラスベガスの最初の公演はコーポーレートショーと言うものです。たとえば東急電鉄の株主総会を東京渋谷の映画館で行った後第一日目のその日の映画を無料で見られるように何かの会社の集まりがありそのイベントの一環として行ったものです。よってそこにいたお客さんはボブディランそのもののファンという人は余りいなかったでしょう。ラスベガス二日目の公演はハウスオブブルースというライブハウスのオープニングセレモニーのゲストという形でした。アトランティックシティの公演が具体的にどういうものであったのかは知りません。

    会場がどこもライブハウスないしそのようなところでしたから基本的にはその会場の照明、音響の機材はあります。よって使う機材やクルーも制限がありました。つまりその会場での必要度の低いセクションのクルー、機材は最後の3公演には参加していません。それは、ツアークルーのバスとその運転手、ケイタリング機材とそのクルー、ライティングの機材とそのクルーです。もちろんそれらを運んでいたトラックの運転手とも(プロダクションツアー最終日の)ポートランドでさようなら、です。



    ケイタリングって何ですか?

    食事のサービスのことです。彼らは一式の調理道具を我々の機材と一緒にトラックに積んでいます。朝は朝食。昼は昼食、晩にはディナー、また移動するバスの中の軽食等、オフの日以外のすべての食事を用意してくれます。私たちは仕事柄決まった時間に皆でそろっての食事というのは不可能です。ですがそこに行けばなにか軽食なりちゃんとした食事ができるようにいつも用意されているのです。




    ところで、クルーの総数は何人くらいなんですか???(いわゆるプロダクション・ツアーの時で)

    15人です。1999年春のツアーを基に記します。

      プロダクションマネージャー  1人
       PAエンジニア               1人
      モニターエンジニア           1人
      ライティングオペレーター     1人
      ステージマネージャー         1人
      バックラインクルー           2人
      サウンドクルー               3人
      ライティングクルー           1人
      リガー *                     1人
      ケイタリングクルー           3人
      
    (* リギングやさんのことで彼は照明や音響機材を天井の梁から吊る際に地元の人と一緒にチェーンモーターを仕込みます)

    この他にバスの運転手2人とトラックの運転手3人がいます。





    Electrotecには以前、Lab-Qという日本でも有名なシステムがありその発展系で Q2 に進化したと認識していますが ボブのツアーで L-Acoustic を使うのは、だれのオーダーなんでしょうか? (質問者:匿名希望)

    長年Bob DylanのPAのエンジニアであったEdward Wynneの意向です。ヨーロッパ公演でV-DOSCを使用するチャンスがあり偉く気に入り、現在に至っております。



    Q2のSubBassを V-DOSCに組み合わせてお使いですがV-DOSCのサブウーハーよりもどんな点にメリットがあるのでしょうか? (質問者:匿名希望)

    正直言ってこれにはAuraSoundがETの親会社である政治的な絡みのほうが大きいと思っています。AuraSoundがある以上そのユニットを使用しないわけには行かない、その関係上コストは押さえられる、もっともそれはそれでかなりよいユニットであるといったところでしょうか。私自身はV-DOSCのサブウーハーを試聴しておりませんが弊社の副社長であり、研究開発部門を務めるTed Leamyによればその音(Q2のSubBass)はV-DOSCのそれよりはるかによいということです。



    Q2のSubBassは18インチ2発入りのボックスだと思いますがスタジアムのような会場では何本くらい利用されていますか? (質問者:匿名希望)

    お尋ねのように18インチが2本はいっております。Bob Dylanの場合でしたら横浜アリーナくらいの大きさの屋内の会場で片側6本です。もっとも1998年夏のNew Jersey州のGiants StudiumでのMettalica公演では片側28本でした。良い例ではないかもしれませんが、、、。




    私の友人が95年秋にみたボブのペットの犬は大きくて灰色の毛むくじゃらでボブそっくりだったそうですが、実際はどんな犬ですか?

    大きな犬ということしか覚えておりません。



    愛犬に名前はありますか?

    あるんでしょうが私は知りません。


    愛犬もいっしょにヨーロッパへ連れて行ったのですか?

    いえ、北米ツアーの場合は何度か見ましたが1998年、99年の欧州ツアーでは見ておりません。






    (Jan/31-May/9/1999)


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