How to Follow Bob Dylan
ボブ・ディランの追いかけ方

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ツアー・クルー


ボブ・ディランのツアーにサウンド・クルーとして同行している 西村 哲さんに 私西村位津子が電子メールでインタヴューを行いました。西村 哲さんのツアー・レポート連載もお楽しみください。

  • クルー・インタヴュー 1
  • クルー・インタヴュー 2
  • ツアー・レポート

  • クルー・インタビュー (1)

    最終更新日: 1999/2/12(金)



    西村 哲(にしむら さとし): サウンド・エンジニア。
    1997年5月より Electrotec Productions, Inc(エレクトロテック プロダクションズ、アメリカ合衆国 カリフォルニア州 ロスアンジェルス)という音響会社に勤務。同年8月からボブ・ディラン・ツアーにモニターテクニシャンとして現在に至るまで10回のツアーに参加。1999年1月末より始まる北米ツアーにも参加予定。雑誌「プロサウンド」にサウンドエンジニアとしての日・米・欧の比較をディランのツアーをベースに執筆予定。(1999年1月5日現在校正中)



    ボブ・ディランのツアーに参加するのはどういうきっかけだったんですか?

    上司からの命令です。




    現在の仕事はどういう内容ですか?

    ツアー中の私の仕事は1、クルーチーフ 2、モニターテクニシャン、 3、モニターエンジニア、4、オーディオエンジニアというように四つに大別できます。

    1998年の秋のツアーを基に説明しますと合計4名の音響クルーのチーフを務めました。私はマイクロフォンからケーブル、アンプ、スピーカーといった音の入り口から出口までの全体のことから細々とした配線すべてを把握しており、何かトラブルがあったとき、あるいはより効率のよい仕事をするために何かの配線を変更するときにはその全体を考慮した上で私が中心になって検討しています。他の3名はそれぞれのセクションごとに内容を理解し、それに従事しています。というのはこの3名はそれぞれフリーのテクニシャンたちであってエレクトロテックの純粋の社員は私だけであるという側面もあります。もっとも私の場合語学力不足からクルーチーフというのは名前だけという部分も残念ながら時としてあります。

    モニターテクニシャンとして、ボブ・ディラン、ジョニ・ミッチェル、デイヴ・アルヴィンのモニター卓回りをセットアップしました。またモニタースピーカーやアンプといった機材を各バンド間で使い回すためそのプラン等は私が練りました。オープニングアクトであるデイヴ・アルヴィンのモニターエンジニアは私が務めました。オーディオエンジニアとしてはステージ上のマイクロフォンの仕込み、また電源回りの仕込み、管理も私の仕事です。



    いつ頃コンサートの日程は決まるのですか?

    正確な日程が会社に来るのは早くても一月前です。1998年のヨーロッパツアーの際はも う少し早かったと思います。(1999年1月5日現在、この下旬から始まるツアーの最終決定 である行程表は届いていません。)またツアーそのもが始まってから一週間予定が延びたり縮んだりということもときどきあります。

    余談ではありますがボブ本人が風邪のため翌週の同じ日に同じ場所でコンサートというのもありました。すべて仕込みも終わり、サウンドチェックも終わった後の発表には少し頭にも来ましたが、、、。というのはこの会場はとても搬入出が面倒臭いところだったものですから、、、。尚、1999年のツアーがいつごろ始まるのか、ヨーロッパにも3月頃行くであろうといった情報は1998年の秋のツアーの時点で大まかな話はでていました。




    音響器材はどういう種類ですか?

    この業界はPAで使用するスピーカーの種類で音響会社が決まります。V-DOSC(ヴィードスク)というフランス製のスピーカーを使用しています。そのほか調整卓からマイクまでの細々した内容は以下の通りです。

    PA
    Speaker System : L-Acoustic V-DOSC, ARCS, Electrotec Q2 Sub Bass
    Amplifiers : Crown macro-tech5000VZ, Refernce
    Processor : BSS FDS388,355
    Equalizer : BSS Varicurve with Remote
    Console : Midas XL-4
    Effect Processor: Aphex 651, Summitte Audio TLA-100A, DCL200,
    Drawmer DS201, Eventide H3000SE, Yamaha REV5, SPX900,
    Roland SDE3000, Lexicon PCM70,80

    Monitor
    SideFill : L-Acoustic ARCS, Electrotec 1x18inch Sub Bass
    Wedges Electrotec SM112, 115
    Amplifiers : Crown macro-tech36x12, micro/macro-tech1200,
    macro-tech3600, macro-tech5000VZ
    Processor : BSS FDS388,310
    Equalizer : t.c.electronics TC1128
    Console : Yamaha PM4000M
    Effect Processor: t.c.electronics TC1128, dbx 903, 904, Yamaha Rev7,
    SPX90II

    Microphone
    Shure Beta52, SM57, Sennheiser MD421, Audio-Technica 4045, CAD E-100,
    Countryman Type85 DI


    会場へはどういう手段で移動するのですか?
    ボブ+バンドとは別行動なんですか?

    バンドもクルーも皆全米各地から主に飛行機でツアーの始まる街に集まってきます。ツアーそのものが始まれば基本的にはベッドの着いたツアーバスでの移動になります。バンドにはそれ専用で一台のバスがあり、ボブのバスも専用で一台あります。これにはボブ本人、パーソナルマネージャーのJeffery Kramer,ワードローブ担当の Suzie Pullen, そして運転手のTomyと愛犬だけが乗っています。




    キューシートは誰がいつ書いているのですか?

    これは曲順表ということでよろしいですね?ちなみに英語ではというか業界ではSET LISTという表現がふさわしいと思います。確かにリンクされたホームページではそうなっていますが。ただし、このリンクで公表されているのはあくまで演奏予定曲目です。ご存じのようにSET LISTはあってないようなものですから。どの曲を演奏したのかはライブが終わってからでないと判りません。たとえば 1997年2月9日東京公演を例にとると

      4th Street / Just like a woman
      One too many / Masters

    この様に2曲、時には3曲がそこに並ぶことがあります。

    ツアー中の大まかな曲順は決まっていて後はその日の本番直前にBOBがTonyと相談して決めている「ようです。」それをプロダクションマネージャーがタイプし、16枚コピーし、各メンバー、楽器、PA、モニター、照明のオペレーターらに渡されます。




    印刷時フォントはなに使ってるか知ってますか???

    ようやくのことでアルから聞き出せました。「うーん、その答えはトップシークレットだ。」といいつつ教えてくれたのは「カミックス ヘビィー」という名前のフォントです。ただしそれを考案したオハイオの会社は既に無く、アルも1978年か1979年ころフロッピィーで手に入れたものをコンピューターが新しくなる度にコピーのコピーを重ねて今の東芝のノートブックのHDに入れているということでした。さてはコピーのコピーよりももっと本物に近いものを再生しようとしていますね?もしそうであれば紙もA4ではなくリーガルサイズにしないとだめですよ。(チェーック!)




    ボブの舞台は他の人と比べてどうですか?
    海外ツアー時も同じ器材を運ぶんですか?


    いたってシンプルだと思います。1998年のオーストラリア、ニュージーランドでのツアーでご覧になったものは普段のツアーでも使用しているものです。もう少し正確にいうとステージに敷いてあるリノリウムから上のバンド台、すべての楽器のことです。他の音響機材、照明機材等はすべて現地の機材でした。(よってそれらを管理する立場の私はこのツアーにだけは参加しておりません。)

    海外で使用する機材は予算にもよってきますので一概にはお答えできません。1998年のヨーロッパツアーでは楽器すべて、バンド台、リノリウム、PA卓回り、モニターのエフェクターとモニターアンプの一部をアメリカから運びました。現地でPAのスピーカー、アンプ、モニター卓、モニタースピーカー、照明一式を借り、ツアーでは持ち回りました。




    サウンド・チェックの選曲は誰がしているのですか?

    ツアーの大まかな曲目に照らし合わせ、Tonyが中心になって決めているように見えます。




    (Jan/02-15/1999)
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