2001年日本公演


1997年以来4年ぶりとなる来日公演レビュー。
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元気だ、21世紀のBOB!
レビュー: 宮坂匡昭
(本文まま)


 大阪は快晴になる予感も、大宮はどうだろうか。

 新幹線が名古屋駅に着くと、やや上気した顔で親友のYが横に座った。お互いが久し振りのBOBを観る事で、ビールを呑みながら普段より上ずった声で会話が続く。 途中大宮の手前にあるジョン・レノン・ミュージアムに寄ると、スカル・マーフィ(往年の名レスラー、全身に毛がない)と不健康そうなジョン・オーツに似たドイツ人兄弟を連れたライターのKとばったり、しばし一緒に見物するも皆何となく落ち着かない感じで、嫌でも21世紀最初のBOBがどんな風だろうか、どんな衣装、どんなパフォーマンス、セット・リストは…多分色んな事を考えているのだろう。  

 外に出ると風が強い、まさか春一番でもからっ風でもないだろうが、ふと思った。本当にBOBは来ているのだろうか。ウドーからは当然何のアナウンスもないので、間違いなく来ていると思いつつ少し不安を感じる。急ごう、大宮へ。

   ソニック・シティ・ホテルのロビーでH夫妻に会う。聞いていた通り美男美女のカップルだ。Yが「奥さん、倍賞千恵子に似てますねぇ。」と母親位の女優を引き合いに出すので、すかさず「そんな事言うと年がバレルよ。」と突っ込んでおくが、余り会話が続かないのはやはりBOBのステージが迫っているせいだろう。  

 ソニック・シティ・ホールは勿論初めてで、ロビーが狭く、入場するのに外に並ばせられる。その間ガラス越しにグッズ売場の設営をしているのを見ると、ああ本当にこれからBOBがここで演るんだなと思い安心した。もう間違いないぞ、ヨシッ。 開場が遅れたせいかなかなか始まらない。横の席のYとは「21世紀最初だからBOBはガラっと変えてくるんじゃない?」「いや、BOBは昔から期待を外してくるから、21世紀とかでは力まず、やっぱりカバーじゃないの」とか他愛のない会話をしている

  と、場内の照明が落ち、例の「Ladies and gentlemen, would you please welcome,Columbia recording artist, Bob Dylan!」が場内に響き渡ると大歓声、Roving Gambler だ。やっぱり力んでない!コーラス毎に歓声が続く、会場全体がBOBを心待ちにしていた事がよくわかる。続く The Times They Are A-Changin’ も Come gather ‘round people で大歓声、おいおい皆BOBの曲をよく知っているじゃないか。

 3曲目は本邦初公開のDesolation Row、ラリーのギターのマンドリン奏法が心地よい。いつもドキっとするEverybody’s making love の下りをさりげなく流すのがいかにもBOBらしい。そしてラリーの3フィンガーがとてもノスタルジックで、BOBのうっとりするような言葉の繋げ方に心が浄化していくような気分になる Don’t Think Twice, It’s Alright、ひときわ気合が入ったBOBのヴォーカルとバンドをぐいぐい引っ張っていくBOBのリードギターが素晴らしい Tangled Up In Blue、トニーは相変わらず嬉しそうな表情をしている。アコースティック・セットの最後はカバーからかリラックスし、歌う事を自分自身で楽しんでいるような This World Can’t Stand Long、こういうBOBを見るのが好きだ。 

 エレクトリック・セットの1曲目は昨年から演りだした Country Pieで、Nashville Skyline というアルバムはBOBのライヴの歴史では埋もれた存在だが、ノリのいいポップな曲が多く、アレンジ次第ではライヴに向くと思う。次に、昔ジョニ・ミッチェルが You gotta lotta nerve を聴いて、「もう何でも歌えちゃうのね」と大絶賛し、BOB独特のメロディーのうねりがあと5分続いて欲しいと思わせる Positively 4th Street が続き、よりタイト感を増した Maggie’s Farm、97年の初日を意識したかも知れない Just Like A Woman とおなじみがまた場内を盛り上げる。そして、残念ながらマイク・レベルが低いけれど7年振りのハープが聴けた Drifter’s Escape、バンド・メンバー紹介を挟んで、最後にこれも本邦初公開の Leopard-Skin Pill-Box Hat が終わると、BOB達は礼をするでもなく、愛想を振りまくでもなく突っ立ったまま、これが余計に受けてしまう。そして暗転、皆総立ちで再びBOB達を迎えようとする。

 アンコールの1曲目は,BOBのヴォーカルを明確にする意図かスティール・ギターではなく、チャーリーのギターが例の2ビートを刻む Love Sick で始まり、ディヴィッドのスネア・ドラム一発で大歓声、皆が待ちに待ったLike A Rolling Stone が続く。そして、BOBにしては珍しいジャズ・ナンバーで、聴きたいと思っていたので感慨ひとしおの If Dogs Run Free、イントロで2,505人全員が理解できる All AlongThe Watchtower、勿論BOBがステージで最も多く演っているナンバーだ。

   Girl Of The North Country か Boots Of Spanish Leather かイントロでは判別できないが、someone が続くフレーズではBOBの誠実なヴォーカルが堪能できるIt Ain’t Me, Babe が始まり、97年の東京ではこの曲のグルーヴで会場全体を一種不思議なムードにさせた Highway 61 Revisited、特に sixty-o〜ne と伸ばして歌うフレイジングで会場を魅了する。  

 最後の最後は、聴くとつい94年のNHKホールの感動を思い出す Blowin’ In The Wind、もはや説明の必要もない。そしてまたも仁王立ちが会場を悲鳴だらけにする。こうして世界中のBOBフリークが注目していた新世紀初のステージが終わった。

   ロビーでは友人達と思わず握手を繰り返し、皆心から満足しているようだ。感動さめやらぬ中、私が思わず口に出してしまったのが、「10日程前に観た息子よりオヤジのほうがずっと元気じゃん!」 外に出ると相変わらずの強風だったが、自分自身とても春めいた気分で大宮駅に向かっていた。





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