2001年日本公演
1997年以来4年ぶりとなる来日公演レビュー。
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何度これを歌ったら…ネバー・エンディング・ディラン!
レビュー: 小谷育代
(本文まま)
(2001年3月7日 大阪厚生年金会館大ホール)
「俺、60の親父を見るのに、何、興奮してるんだろう」
開演前、隣の大学生ぐらいの男の子2人組の会話が聞こえ、思わず(私も同じ!)と心の中でうなずいた。数多いライヴの中でも珍しく2列目のどまんなかなどという席をゲットした今夜は、やけにドキドキしている。
ずっとディランを聴いてきたおっちゃん達。海外から追っかけてるとおぼしきマニアな外人さんたち。何かわからず彼氏に連れてこられたお姉ちゃん。いつも行くオール・スタンディングのライヴのことを思うと、さすがに年齢層も高くいろんな人がいる。私もリアルタイムのディランとの出会いが「欲望」のアルバムだから、年だけは食ってるけどね。
7時になるかならないかのうちに暗転。中央にアコギを抱えたディラン登場。ああ、やっぱり思ったより小さいなあ。でも、オリジナルのメロディがまるでわからなくなるヘロヘロ・ヴォーカルのイメージに反して、その声は意外にしっかりしている。黒に銀のラインの入ったスーツにコンビの靴というスタイルのディランに、"Father!"の声が飛ぶ。
バンドのメンバーもスーツできめていて、アコギとウッド・ベースでノリノリのカントリーなナンバー、"Roving Gambler"でスタートだ。さっそく手拍子が起こり、とてもいいムード。
ディランもちょっと身をかがめてリズム取ったり(コステロ風)、ギターを前に突き出したり(もうちょっと派手ならウィルコ・ジョンソンか)と、けっこうおちゃめに動いている。続いて、聞き覚えのあるメロディは"Times They Are A-Changin'"。前回あの崩しっぷりにやられて、有名な曲もなかなか判別できなかったことを思えば、今年は楽勝だ。
「時代は変わる」。右端に立つスラリと背の高いギタリストを見た時、つくづくその想いがこみあげてきた。“チャリ坊”だ! まさかこんなところでお目にかかるとは。まだ16,7歳だったチャーリー・セクストンがそう呼ばれ、アイドルとして音楽雑誌のグラビアを賑わせていたのはもう15年以上昔。 その彼が当時のカッコよさのまま大人になって今、60の親父ディランの元で弾いている。大きな身体を折り曲げて、他のメンバーのタイミングを気遣い、決して中央に出ることもなく。まさにロックの歴史を感じる図だ。
"Maggie's Farm"からエレキに持ち替えてのセットに。ラフな感じの"If Not For You"は、どうしてもルー・リードの"Sweet Jane"に聞こえてしまって苦笑い。ウォールフラワーズにも似たような曲があるけど、結局みんな大元はこれなんだよと納得。 ラリーがスティール・ギターやブズーキを弾いたりした後、何と言ってもこの日の圧巻は"Tangled Up In Blue"。後半、ディランはアコースティック・ギターに固定したハープを合間に吹くのではなく、ギターはそのまま背中にまわして、まるでハンドマイクで歌うように持って、ひたすら吹きまくる。(これだけ息が続けば、親父さんも当分くたばったりはしない)などと失礼なことも思ってしまうぐらいの大熱演に客席も大喝采だ。
そして、ゴキゲンなノリの"Rainy Day Women No. 12 & 35"の最後にメンバー紹介。もちろん私も立ち上がって応える。
"Love Sick"でちょっとしんみりと始まったアンコールは、どう歌い崩したって絶対わかる"Like A Rolling Stone"へと続いて大歓声。思わずストーンズのドーム公演も重なって、一緒に歌ってみるものの、あの崩しにはやっぱりなかなかついていけなかった。文字通り突っ走る"Highway 61 Revisited"の後、とどめはやっぱりこれ聞かなきゃ帰れない
"Blowin' In The Wind"。ニール・ヤングの轟音ギターのカバーもいいけど、今夜は正調「風に吹かれて」だ。
"How many times〜"なんて歌い出しを、目の前のディランは一体何回ぐらいやってきたことか。そして、これから先どのぐらい続けていくのだろう。ふとそんな想いがよぎった。だけど、それこそ「答えは風の中」。たとえ今夜エンディングのコーラスが決まり、メンバーがステージを去っても、彼の「歌」はまだまだ終わらない。私が聴けなかった
"Forever Young"や "All Along The Watchtower"と一緒に、今日もどこかで鳴り響いているのだ。“ネバー・エンディング・バンド”と呼ばれるわけがよ〜くわかったよ。
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