3 days with Bob Dylan in CA
レビュー: 原田英茂
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はじめに。
ボブのファンになって早17年になるわけですが、念願のアメリカツアー追っかけが実現しました。当初はNYに見に行きたいと思ってましたが、7月は仕事の関係で休めそうもなく、またカリフォルニアに友人がいることもあり、決めました。
さっそくその友人にメールを書き、チケットを手配できるか打診しました。カリフォルニアでは今回6回のコンサートがあり4,5回見ようと思っていましたが、友人がに行くのはSacramento,Concord,Mountain Viewとの事もあり、この3日に決めました。
さらに彼の家に泊めてもらい、さらに彼の車に同乗させてもらうという願ってもない追っかけになりました。
丁度この日がチケットの発売日ということもあって徹夜で(あっちは朝でしたが)メールでお願いし、チケットを入手してもらったわけです。
本当にその友人と彼の家族には何から何までお世話になりました。本当に感謝です。彼がいなかったら今回の素晴らしい体験をすることもできなかったでしょうし、アメリカの素晴らしさに触れる事もできなかったと思います。
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Arco Arena, Sacramento, California
June 16, 1999
Arco ArenaはSFから北東に車で2時間くらいの所で、いかにもアメリカの田舎といった広大な風景の中をドライブして行ったところにある会場です。友人いわく、もともとこの会場はサッカーなどのスポーツアリーナなので音響は最悪とのことでしたが、確かにエコーはあるものの、それほど悪いとは感じませんでした。
この日はPaul Simonがオープニングでした。Paulは前に漢字の「夢」、後ろに英語で「DREAM」と入った帽子を被っており、ひょっとして日本が好きなのかもしれないなと思いながら見ていました。
PaulはGraceland時代の曲を多く演奏し、正直言ってそれ程ファンではない私としては、もっとS&G時代の曲が聞きたいと感じました。たとえばThe Boxerとか。(結局私たちの行った3日間では演奏せずじまい。他の日はときどき演奏しているのに)でもPaulを見たのは始めてでしたが、なかなか素晴らしかったです。Bobのバンドと違い、ブラスも入ったビッグバンドでした。演奏の質は高く、Paulの歌も申し分ありませんでした。ただ、残念だったのはBobが日替わりSETLISTなのにPaulは毎日同じ(Talkも同じだったような)だったことでしょう。
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Paulのセットが終わるとPaulがBobを紹介し、いよいよBobの登場です。
Bobの衣装は最近の定番スタイルで、水玉のシャツにストライプの入ったパンツといういでたちでした。私にとって実に2年ぶりのBobです。思わず涙。
- Bob Dylan / Paul Simon -
The Sound Of Silence
Paulがギターであのイントロを演奏します。この曲を演奏するのはわかっていましたが、いざ始まってみると鳥肌が立つ思いでした。なんと言ってもBobですから、きれいにハモるはずはないのですが、それでも素晴らしいと感じました。まさに歴史的瞬間です。それにハーモニカはすごく良かった。感動しました。
I Walk The Line / Blue Moon Of Kentucky
(Duet with Paul Simon)
カントリーのメドレーで、観客は喜んでました。
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Knockin' On Heaven's Door
(Duet with Paul Simon)
1978年のバージョンを思わせるレゲエバージョンでした。2番の歌詞でBobがfightと歌って、PaulがShootと歌って、二人で顔を見合わせて笑ってましたが、やっぱり練習不足なのかな。割と二人共勝手に歌ってました。でもBobの笑顔が見れるのはやっぱりうれしいものです。
デュエットは、きっとツアーの後半になればずっと素晴らしくなるのでしょう。そうまだツアーの前半です。
20分位のセットチェンジの後でいよいよBobのセットのスタートです。
@ Cocaine Blues
Bobはデュエットの時とは衣装を変えていました。いつもの黒いスーツの上下に蝶ネクタイでした。新加入のCharlieは昔テレビで見たことがありますが、ほとんど変わっていませんでした。(昔はアイドルで日本にも来てテレビに出演していました)それにしても30才ですよ。私より若くてBobのバンドにいるのは実にうらやましい。
バンドがイントロでもたつきましたが、すぐに持ち直してのCocain Blues。LarryはBuckyの穴を埋めるべくマンドリンを演奏。Larryが高声、Charlieが低音で歌い、コーラスもバッチリ決まってました。去年等の演奏に比べてテンポが速くなり、私はこのバージョンの方が好きです。
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@ My Back Pages
ずっとこれが聞きたかった。97年の追っかけは東京しか行かなかったので、この曲は初体験です。以前から、ぜひ聞きたい曲があって、そのうちの1曲がこれでした。Larryのフィドルも素晴らしくて思わず涙でした。しかもハーモニカ!94年以来のハーモニカです。テープでは聞いてましたが、やっぱり生のハーモニカ演奏は素晴らしいの一言!マイクを手に持ってのハーモニカを初めて見れて感動です。まさに、この日の1番目のハイライトです。
@ Don't Think Twice, It's All Right
この曲でもハーモニカが登場です。3日間とも演奏しましたが、この日が一番良かったかな。ハーモニカも一番この日が長かった。Bobもご機嫌で踊りながらの演奏です。こんなに元気なBobは初めて。やはりアメリカでのBobは違う!
@ Masters Of War
最近のこの曲は本当にかっこいい演奏です。Charlieはドブロを演奏していましたが、どうも良く聞こえなかった。バッキングに徹しているといった感じです。
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@ Tangled Up In Blue
テープではあまりにも多く聞いているので、やっぱり演奏するのかという感じでしたが、やはり生は違います。盛り上がります。そしてやはりいつもとは違う歌い方で楽しませてくれました。客席が盛り上がる1曲です。
この曲でアコースティックセットは終了、Bobはいつものストラトキャスターに持ちかえて、
All Along The Watchtower
97年4月のツアーを思い出させるバージョンで、Charlieがアコギを演奏します。この曲のイントロって何回聞いても血が騒ぎます。Bobの数ある曲の中で1番演奏回数の多いこの曲ですが、やっぱり素晴らしいです。エンディングが以前のバージョンとは、変わっていました。
Positively 4th Street
Larryがペダルスティールを演奏して、Buckyの穴を埋めます。Larryってペダルスティールもすごく上手いですね。これなら大丈夫だと感じました。Bobは語るように歌い、新たな生命をこの曲に与えていました。
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Stuck Inside Of Mobile
この曲でもCharlieはアコギ担当。今年のヨーロッパツアーよりも良い演奏でした。この曲ではBobのギターが冴えていました。
Not Dark Yet
素晴らしい!Bobも実に丁寧に歌って、バンドも最高に美しい演奏で答えていました。Larryがペダルスティールを演奏するかなと思っていましたがギターでした。個人的にはヨーロッパよりも良いと感じました。
恒例のメンバー紹介の後で、強烈な、
Highway 61 Revisited
Charlie初の見せ場だったような気がします。ソロも弾きまくっていました。Larry はボトルネックを使用してました。この日は席があまり良くなかったので、ステージラッシュが起こったのかわかりませんでした。
Love Sick
Buckyが抜けたことで、心配していた曲です。予想では、BuckyのパートをLarryがペダルスティールを演奏するのかなと思っていましたが、実際はイントロをCharlieがギターで演奏し、Larryがいつものようにソロを弾きました。Buckyの演奏が頭に入っているので少し物足りないような気がしましたが、このバージョンもまた良いです。以前よりロックっぽくなった演奏といえるでしょう。
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Like A Rolling Stone
いい演奏でした。コーラス部分でBobはオリジナルのような高音でシャウトしてくれました。CharlieがMike Bloomfieldのリフを再現しており、気分も一段と盛り上がります。最後は全員が向かい合ってエンディングを迎えます。
@ It Ain't Me, Babe
97年の東京初日のステージラッシュを思い出しました。この日はあの日とは違ってハーモニカがあり、この曲の演奏をさらに素晴らしいものにしていました。ハーモニカ演奏が素晴らしく、エンディングのテンポが変わるところは実に感動的でした。このパートがくると私はいつも、もう終わりなのかとせつなくなります。
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Not Fade Away
生で聞くこの曲がこんなに素晴らしいとは。実にエンディングにふさわしい。コーラスはこの曲もLarryが高音部、Charlieが低音部を歌っていました。なんとBobの演奏時間は95分!
初日から素晴らしいショーでした。My Back PagesやNot Dark Yetが聞けたし、Love Sickを除けばBuckyの不在も気になりませんでした。Charlieの加入で演奏が以前よりロックっぽくなったようです。まだバッキングに徹していますが、これからが楽しみです。 日本で見たどのショーよりBobは元気でした。やっぱりアメリカまで見に来てよかった。
おまけ。
この会場の駐車場はとにかく広く、目印が"C4"だったんですが、暗いこともあって全然見つけられずに30分位探し回りました。この間の不安だったこと。友人が見つけてくれなかったらどうなっていたことやら。友人もこれに懲りたのか次の日からはショーが終わっても席にいろと言ってくれました。
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Concord Pavilion, Concord, California
June 18, 1999
Concord Pavillionは、なんと山の上にある野外の会場で、駐車場から20分くらい坂を登らなければならないところにあり、大変でした。こんなところに会場があるなんてさすがアメリカです。雰囲気もすごくよかったし。
それに、私たちにとって初めての野外のコンサート。しかもこの日はBobがオープニングなので、夕日の中で見れるなんて素晴らしいですよね。この日は席が良くて前から10列目くらいだったので、Bobの表情もしっかり見ることができました。定刻から10分位遅れて、唐突にいつものアナウンスが流れ、
@ Friend Of The Devil
まだ明るいのでBobはサングラスで登場。もうこれだけで、この日行った価値がありました。Grateful Deadの本拠地らしくこの曲からスタート。Deadheadsはおお喜び!もちろん私もおお喜び。コーラス部は大合唱でした。
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@ The Times They Are A-Changin'
大分あたりも暗くなってきました。後ろは夕日!夕日の中でBobを見ている。最高の瞬間です。さすがにこの曲でもみんな歌っていました。この日1曲目のハーモニカ登場です。この曲が終わると全ては聞き取れませんでしたが、ここに戻ってこれてうれしいと言ってました。
@ Masters Of War
この曲の前でBobはサングラスを取り、演奏に入ります。この日はBobの目を見れないのかなと思っていたので、ちょっと安心。これまた素晴らしい演奏。
@ Don't Think Twice, It's All Right
2曲目のハーモニカです。観客は喜んでいました。Sacramentoよりかは短かいハーモニカでした。それに演奏自体もSacramentoの方が良かった。
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@ Tangled Up In Blue
やはり観客が喜ぶ1曲です。Deadでもなじみのあるこの曲はやはり盛り上がります。
All Along The Watchtower
やはりカッコイイ、オープニングナンバーです。
Lay, Lady, Lay
Bobはご機嫌で、2番の歌詞の"big brass bed"の後で"Oh year"。忘れられない一瞬でした。また、演奏が終わると、"I don't have a brass bed anymore. I never did have one",それから、Stuck Inside Of Mobileのイントロでは、"I was kidding"... "I've got a lot of them"と、このツアーの特徴であるジョーク
(*) を飛ばします。
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Stuck Inside Of Mobile
3日間の中では一番のできでした。Bobのソロも絶好調でした。低音を(ギターの5,6弦)使ったソロでした。
Not Dark Yet
やはりこの曲はハイライトです。バックの演奏も素晴らしい。
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Highway 61 Revisited
妻はステージの前に走ります。彼女の話によると、さらにBobはご機嫌になり笑顔が増えたそうです。この日もCharlieが大活躍。
Like A Rolling Stone
この日は時間の関係からか、LoveSickは演奏されずに、いきなりでした。エンディングのBobのギターはSacramentoより良かったです。
@ It AIn't Me, Babe
この日もアンコールのアコースティック曲はこれでした。3曲目のハーモニカ登場。Sacramentoよりも良かった。演奏が終わるとPaulを紹介して...
The Sound Of Silence
(Duet with Paul Simon)
個人的な意見ですが、Bobのバンドの演奏の方が良かったような気がします。Larryがペダルスティールを演奏します。Sacramentoより二人の出来がいいです。
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I Walk The Line
/Blue Moon Of Kentucky (Medley with Paul Simon)
Larryがフィドルを演奏、素晴らしい演奏でした。
Knockin' On Heaven's Door (Duet with Paul Simon)
LarryとCharlieがコーラスを付け、いつもと同様の演奏でしたが、キーがAからGになっていました。この曲もSacramentoよりそろっていました。3曲ともPaulのバンドよりいい演奏だったと思います。まあ、これは私の音の好みの問題かもしれませんが。
20分の休憩の後でPaulが登場しました。はっきり言ってBobが終わってしまったのでちょっと退屈でした。せめて何曲か違う曲を演奏してくれてもいいのに。同じセットリストにほぼ同じの喋りでした。
Bobはこの日が一番喋りました。ジョークもありましたし。3日間の中で、時間が一番短かったですが、素晴らしいショーでした。
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Shoreline Amphitheater, Mountain View, California
June 19, 1999
Shoreline Amphitheaterも野外の会場で、中には沢山のDeadheadsが店でアクセサリーを売っていたり、ここで演奏したアーティストの写真が沢山飾ってあったりと素晴らしい会場でした。それにConcord以上にDeadheadsの多いこと。それにすごく寒い!行く前に暖かくして行けと言われていたのですが、それでも寒い。CAというと暖かいというイメージがありますが、SF周辺はそれ程でもないようです。
この日はPaulがオープニングなので夕日の中でBobというわけにはいきませんがオープニングだと演奏曲目が少ないのでこれでいいです。この日も席がすごく良くて前から8列目くらいでした。友人に感謝です。Paulはやはり同じセットリストで演奏。残念!
PaulがBobを紹介して、デュエットスタートです。
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The Sound Of Silence
(Duet with Paul Simon)
Bobは違うキーのハーモニカを取ってしまったようで、ちょっと変でしたが、なんとかまとめました。この日はBobの声が前の2日より大きくミックスされていて、はっきりと聞こえました。でも残念ながら3日間で最低の出来でした。
I Walk The Line /Blue Moon Of Kentucky
(Medley with Paul Simon)
この曲はまあまあでした。
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Knockin' On Heaven's Door
(Duet with Paul Simon)
残念ながらこの曲もいまいちでした。まあこういう日もあります。20分のセットチェンジの後で、Bobの再登場です。
@ Hallelujah, I'm Ready To Go
初めて聞きましたが、なかなか素晴らしいオープニングナンバーでした。Larryはマンドリンを演奏します。LarryとCharlieがコーラスを決めます。
@ Mr. Tambourine Man
ハーモニカ登場。この曲の最近の演奏に少し飽きていたのですが、とんでもないいい演奏でした。
@ Masters Of War
結局3日間とも演奏しましたが、これもいい演奏でした。
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@ One Too Many Mornings
この日1回目のハイライトです。Larryがペダルスティールを演奏。素晴らしい演奏でした。Bobもとてもやさしく歌ってこの曲の美しさを引き立ててました。この日が追っかけ最後の日で明日には東京へ帰らなくてはならないのかと思うと、実にせつなく響いて来ました。あと何日でもBobを追いかけていたい。私の気持ちにぴったりの曲でした。
@ Tangled Up In Blue
最後の歌詞をBobは高い声で歌い、そこからハーモニカソロへ。すごくパワフルな演奏!3日間の中ではベストでした。
All Along The Watchtower
いつ聞いてもこのイントロは血が騒ぎます。Larryが最高のソロを聞かせてくれました。
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Just Like A Woman
Larryはペダルスティールを演奏。この曲でもLarryはペダルスティールの才能を遺憾なく発揮して、素晴らしい演奏を披露してくれました。
Stuck Inside Of Mobile
SacramentoやConcordとは全く違う節回しで歌ってくれました。これだからBobはおもしろい。
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Not Dark Yet
やはりこの日もこの曲はハイライトでした。Bobも毎晩演奏するということは、この演奏に満足なのでしょう。去年の演奏より断然素晴らしいと思います。Bobもすごく丁寧な歌い方をしており、実に感動的でした。
Highway 61 Revisited
Bobはエンジン全開で、ステージラッシュしている連中に投げキッス!感激です。妻はBobは私にやってくれたと言っていますが、きっと前にいた全員がそう言っているんでしょうね。
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Love Sick
Buckyの不在を感じさせない素晴らしい演奏でした。Bobはここでジョークを一発。"(sarcascm dripping) that was a LOVE song. They're all love songs. Theband loves to play them."
Like A Rolling Stone
エンディングでBobは最高の笑顔を見せてくれました。バンドのみんなも笑顔でした。また、Bobのギターはこの日が最高でした。
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@ Don't Think Twice, It's All Right
Tonyと結構長い間話した後で始まったのがこの曲でした。せめてBlowin'とかForever Youngだったらもっと良かったのにと思います。他の2日間とは違って最後の歌詞は演奏が静かにならずに全力の歌と演奏でした。エンディングはハーモニカ。
Not Fade Away
Deadheadsおお喜びです。最高の演奏でした。エンディングでBobは2度目の投げKiss!こんなBobを見れたなんて夢のようです。でも、私たちの夢のような追っかけはこの曲と共に終わってしまいました。
3日間とも、どれも違った素晴らしいショーでした。欲を言えばもっと違った曲をやって欲しかったとは思いますが(Masters Of War, Don't Think Twice,Watchtowerなどは3日間とも演奏した)それでも最高でした。デュエットが一番良かったのはConcordで、BobのセットのベストはMountain Viewでしょう。
バンドはタイトでCharlieはまだバッキングに徹していますが、これからはもっと目立ってくるでしょう。Buckyの不在もほとんど感じませんでした。
必ず、再びアメリカを訪れることを誓って...
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↑ チケット。 6/16 サクラメント、6/18 コンコード、6/19 マウンテン・ビュー
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参考: Bob Dylan Jokes - Expecting Rain
@ = アコースティック楽器でのバンド演奏
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