最近のボブ


最近のボブに関する様々な話題

最終更新日: 2001/4/30


表紙へ

■佐賀新聞「最近のボブ・ディラン〜変身ぶり「なんかヘン」〜」

2001年4月29日佐賀新聞にボブ・ディランについての写真入り記事 「最近のボブ・ディラン〜変身ぶり「なんかヘン」〜」(署名:和)が掲載されました。

(以下全文- 仁部さんのメールに感謝)





最近のボブ・ディラン〜変身ぶり「なんかヘン」〜

米国のミュージシャン、ボブ・ディランは、固定したイメージを嫌って常に変身してきた。ところがその変身ぶりが、近ごろ「なんかヘン」なのだ。

今年二−三月の来日公演では、膨大なレパートリーから新旧取り混ぜて演奏、衰えぬパワーでロックした−そこまではいい。だが、エレキギターの構え方が本邦の田端義夫そっくりで、チャック・ベリーに張り合うようなひょうきんなアクションの連発が、なんかヘンだった。

三月下旬のアカデミー賞授賞式では、主題歌受賞の「シングス・ハブ・チェンジド」を、ツアー先から衛星中継でライブ演奏した−そこまではいい。だが、上目づかいのカメラ目線やチョビひげ、珍しくよくしゃべった受賞スピーチが、なんかヘンだった。

フォークの神様、ロックの詩人、ノーベル賞候補・・・自分にまとわりつくあれこれのレッテルと闘い、「転がる石のように」歌ってきたディランは、還暦を目前にして、またもや新境地を開拓したようだ。それは、「老い」と「ユーモア」の境地である。

実は、一九九〇年代半ばの彼は、創作面ではスランプ状態にあった。自作アルバムがめっきり減り、カバーやライブに力を注いだ。彼ほどの天才にもライターズ・ブロック(創作家の行き詰まり)があるのか、との声さえ聞こえた。

肺の感染症で倒れ、一時は「もしや」と危ぶまれた。さしものディランも老いには勝てぬか−寂しさがファンの心をよぎった。そんなとき、全曲自作の「タイム・アウト・オブ・マインド」が発表された。そこでのディランは、老いと闘っていなかった。老いを受け入れ、死を見つめることで、新たなディランとしてよみがえっていた。そこには、ほのかなユーモアのかおりがした。

それ以来彼は、神様でも伝説でもない、ただの「歌うたい」として世界を旅している。「みんなはクレイジーだし、時代はストレンジだ。いろんなことが変わってしまった」(シングス・ハブ・チェンジド)とつぶやきながら。(和)