1965年イギリス・ツアーのドキュメンタリー映画です。日本語字幕ビデオは長い間入手困難となっていましたがSony Recordsからめでたくオリジナル・マスター・フィルムを使用し再発売されました。

絶版となった、パック・イン・ビデオ(86年発売 VHS \12800 RVM-1)版と比べると値段は安くなり、翻訳字幕が少し変わり、パッケージデザインが変わり、付属ブックレット内容も変わりました。また「レンタル可」から「不可」になりました。

曲目・作者名、撮影されたツアーの日程(1965年4月30日から5月10日まで)、初公開日(サンフランシスコで67年5月17日)、スタッフ・出演者紹介、製作当時の裏話、映画収録曲の出典レコード・ガイド、など菅野ヘッケル氏による付属ブックレットは、字幕翻訳者名が無いことを除けば完璧と言って良い監督ペネベイカーの名前(ドン・アラン)までわかる優れた資料です。

映画は当時の「ボブ・ディラン」の受けとられ方と行動を一台のカメラで捉えた素晴らしいドキュメンタリーとなっており、舞台を袖から映し、揺れながら人物を捉えるカメラワークは臨場感あふれるものです。

映画冒頭の映像「Subterranean Homesick Blues」は現在のプロモーション・ビデオの走りといわれていますが2分以上ワンカットです。しかも極端なズーム・アウトの始まり以外(画面は揺れているものの)同アングル、左から右奥へのびる建物壁面を背景に、2人の人物(*)とゴミ袋の山(?)を左端に配置し、右側手前へ大きくボブ・ディランを立たせるという見事な構図はまるで「市民ケーン」です。画面中央に掲げた歌詞パネルを曲に合わせ投げ捨てるボブのアイデアは秀逸ですが、ジョーン・バエズやドノバンもパネルに歌詞を書く際お手伝いしたそうです。
* アレン・ギンズバーグとロビー・ロバートスン(？)

余談
- 映画シノプシスはイギリス(？)でペイパーバック発売されています(現在絶版)
- 1991年にケイブルホーグ配給で日本初上映された模様
- その後再上映、NHK-BSやTVで放映もされています
- 監督が考えたタイトルのDONT にアポストロフィは要りません
- ティム・ロバーツ監督「ボブ・ロバーツ」(1991年)は気のきいたパロディをしています
- ポール・ウィリアムズは本「瞬間の轍１」で見事にこの映画の解説もしています
- ボブは後のインタビューで「ギャラはもらっていないし盗み撮りされていた」などと言っています(本「イン・ヒズ・オウン・ワーズ」)
- 本「指名手配」にはD.A.ペネベイカー、理工学生のインタビューが掲載されています
- レーザーディスク発売はなし
- 私が購入したものは最初の｢時代は変わる｣途中で画面にノイズが入る悲しいコピーでした